うさぎの秘密…
うさぎは、跳ねることから「飛躍」を意味する吉兆柄とされています。
私が波佐見焼きで働いていたとき、どうしてこんなに有田焼地方にはうさぎが多いのだろうと思いながら何匹も描いていました。
その理由を「吉兆柄」であるから、と聞いたとき、私にとってうさぎ柄は器にとって特別なものに感じました。器の中には、うさぎが住んでいるんだと。
札幌に帰ってから、さてこれからは自分の好きなように器を作ろうと思いましたが、最初はどうしても古典の柄を描いてしまいました。有田焼き、波佐見焼きへのリスペクトからそうなっていたのですが、尊敬する波佐見焼きの社長が、それは私のするべきことではないと言いました。
それからです。私は、私の中で見えている、「器に住んでいるうさぎ」を描くことにしました。
言い方を変えると、私にしか見えていないうさぎの器を作るのです。
厳寒の都会・札幌で育った私だけが感じる、有田・波佐見焼き地方の染付け磁器の世界。波佐見焼きに根付く、大きな伝統技術の向こうにあるもの。それは「私」というフィルターを通した、新たな世界です。
かくして、伝統柄であるうさぎは、私のフィルターを通っていろいろな器で生活するようになりました。
器の形に合わせてその世界は立体的に、どんどん面白くなります。お料理を入れたときに、どこにうさぎがくるか、とかを考えながらデザインするのも、自分の力量と向き合わなければならない、時間のかかる作業です。
それらにすべてエネルギーをかけることでできた器が、どこか誰かに買ってもらい、その人のおうちに住んで、その人のお食事をその人と楽しんでいただけたら、こんなに幸せなことはありません。
うさぎがいろいろな人に連れて行ってもらえることで、私は勝手に喜びを感じています。
ご購入くださったみなさま、うさぎたちを、楽しいおうちで過ごさせていただいて、本当にありがとうございます。
これからもどうか、おうちの一員としてかわいがってやってください。